カジノ法案の整備と共にここ数年で「IR」という言葉を耳にする機会が一気に増えました。特にカジノ関係のニュースにおいては軒並みIRという言葉が登場しています。
カジノの設置に関しては賛否両論あると思いますが、テレビやネットのニュースで取り上げられているのをきっかけとして興味はなかったけど、考える機会が増えたという人もいるのではないでしょうか。
その一方で、「そもそもこのIRとは何?」、「IR=カジノで合ってるの?」という疑問を抱いている人も少なくないはずです。そこで、ここではその「IR」に関する基礎知識について解説します。ぜひ参考にしてみてください。
そもそもIRとは何か?
IRとは「Integrated Resort」の略であり、直訳すると「統合型リゾート」です。メディアなどでもIR(統合型リゾート)と表記している例が多いと思います。統合型リゾートとは具体的には以下のような設備が一体となった複合施設のことを指します。
・カジノ
・国際会議場
・展示施設
・ショッピングモール
・レストラン
・ホテル
・映画館
・劇場
etc…
「IR=カジノ」と認識されることも多いですが、正確には「カジノを含む様々な設備が入った施設」です。もちろん、IR施設へはカジノを目的に訪れる人が非常に多いのですが、単純に宿泊をしたり、娯楽を楽しんだりするために訪れる人もたくさんいます。また会議場や展示施設などは日本で言えば千葉県にある幕張メッセのように大規模な展示会や催しを開催する所もあり、カジノ以外にも多くの利用者が集まる場所にもなっています。
そのため、IR企業と呼ばれる会社の多くはカジノ運営だけではなく上記施設なども含めて事業運営を行っており、ハードロック社のようにIRを手掛ける企業でありながら、カフェ事業が有名になっている企業もあります。いずれにせよIRを手掛ける各社はリゾート施設に関する様々なノウハウや知見を有しています。
IR誘致がもたらすメリット
IRはもともとアメリカのラスベガスで誕生した施設・形態ですが、近年はマカオやシンガポールでもトレンドの産業となっています。多くの国がIRを積極的に誘致する理由は、IR施設がもたらすメリットが非常に大きいからです。
ここではIRを誘致するメリットについて解説していきます。
①観光客の増加
IR施設がある国には、たくさんの観光客が訪れます。単純に「カジノがしたい」という理由で訪れる人もいれば、「豪華な施設に宿泊したい」「複合施設で様々な娯楽を楽しみたい」という理由で訪れる人も多いです。また観光次いでにカジノにも寄るという人も大勢います。
彼らが当地に落とすお金は大きく、それだけでカジノおよび周辺施設の集客および売り上げの一つのチャネルになります。これは地方に行けばいくほど顕著になるのではないでしょうか。また、カジノ自体は通年のイベントのため、何らかのイベント時に一斉に集まり、それ以外は閑古鳥が鳴くといったような状況ではなく、定常的に集客が見込めるという点も大きいです。
現在、IR施設があるマカオやシンガポールといった国も観光客を集めるのに苦労していた時期もありましたが、現在では1年を通じて世界中の国の人たちが訪れる観光地となりました。この一因としてIR施設が果たした役割は小さくありません。以上からIR施設の誘致は観光客を増加させ、経済効果をもたらすことが期待できると見られています。
②税収の増加
IRを誘致すると、国に入る税金も増えます。IRで楽しめるカジノには税金がかかるため、観光客が増えれば増えるほど税収が増加するという仕組みです。
実際にカジノを税収の柱としている国もあり、例えばマカオにおいては、歳入の7〜8割をカジノによる税収が占めています。カジノによる税収が増えれば、それを財源の確保や赤字国債の削減に回すこともでき、財政を健全化することにもつながります。
③雇用の促進
IRは地域の雇用を促進するというメリットもあります。IRの中にはカジノ以外にも、ショッピングモールやレストランなど様々な設備が入っているため、それだけ多くの従業員が必要です。IRが1つあるだけで、数百〜数千単位の雇用が生まれます。
最近の事例で有名なのがフィリピンの首都マニラで、ここは元々貧困層が一定数存在する地域でもありましたが、IRの誘致に成功したことで、多くの人々に雇用機会が与えられました。このようにIRの誘致は単純な経済効果だけでなく、雇用の促進も期待できます。
④地域のインフラ整備促進
IRが誘致される地域は、インフラが急速に普及する可能性が高いです。観光客が駅や空港から足を運ぶ手段を用意してあげる必要があるため、必然的にバスや電車の運行経路を確保する動きが進みます。IR誘致でインフラ整備が促進されれば、経済効果に加えて地域活性化にもつながるでしょう。
IR誘致に関するデメリット
IRに関しては前記したメリットだけではなく、デメリットとして考えられている事もあります。
デメリットとして語られる事が多いテーマとしては様々なケースがありますが、一番大きく指摘されている点がギャンブル依存症が増加するという点です。
他では、実際にカジノを開いてみたは良いものの、人が全然来ないという状況もあり得るという事も指摘されています。
この二つに関して言えば、前者は入場制限を設ける(入場料を高額に設定する、等)事で、後者に関してはカジノ施設の設置数を制限する(国内3カ所まで、等)という事で対応を図る模様ですが、最終的には開設してみないと分からない部分も大きく未知数だと言えます。但し、前述したようにIRはカジノだけというよりは他の事業も含めた形で展開されると思われますので、そちらの事業も含めてどのようにIR全体を収支も含めプランニングしていくかという点が大きいのではないでしょうか。
日本国内ではIR誘致の動きが加速している
前述の通りIRには様々なメリット・デメリットがありますが、日本国内においてはそもそもカジノが法律で禁止されているため、IRを誘致できずにいました。しかし経済的に大きなメリットがあることを鑑み、2016年に「統合型リゾート(IR)整備推進法案」が成立したため、これをきっかけに、日本国内でもカジノが解禁される道が開かれました。
とは言え「統合型リゾート(IR)整備推進法案」は、今後のIRの運営方針を定めるものであり、具体的にいつ・どこにIRをするかは決定していません。今後はカジノを運営するうえでの細かいルールを法律で定めた後、IRを誘致するという流れです。
なお、IRが開設されるタイミングについては、早くても2025年前後ではないかと言われています。もともとは2020年の東京オリンピックに合わせての誘致が期待されていましたが、各法案の審議が長引いているため、現状ではまだまだ時間を要するという状況です。また、昨今ではIRを巡る汚職事件により現職の議員が逮捕されたということもあり、IRに関しては厳しい目が向けられている状況です。
IRは世界的なトレンド産業でもあります。日本国内でもIR誘致の動きが加速していることから、今後ますます「IR」という言葉を聞く機会が増えるはずです。